家族信託普及のための実務に役立つ情報を会員の皆さまに定期発信中です!

一般公開

#公証役場の使い方

第5回 公用文表記ルール習得の勧め・その3

一般公開期間:2026年4月1日 ~ 6月30日

※当記事は2026年4月の内容です。

1 前回までの復習

 前回までに、間違いやすい公用文用字用語10語を紹介しました。
 ⑴「および」⇒「及び」、⑵「ならびに」⇒「並びに」、⑶「または」⇒「又は」、⑷「もしくは」⇒「若しくは」、⑸「又」⇒「また」、⑹「すべて」⇒「全て」、⑺「まったく」⇒「全く」、⑻「予め」⇒「あらかじめ」、⑼「但し」⇒「ただし」、⑽「もっぱら」⇒「専ら」です。
 これだけマスターすれば、見る人が見れば、「この人は公用文表記に注意を払う人」であるという評価を得ることができます。

 今回は、前回までに比べて少し手広く紹介し、実務に役立つ公用文表記について解説したいと思います。

2 今回の公用文表記

 今回は、⑾「6ヶ月」⇒「6か月」、⑿「四谷3丁目」⇒「四谷三丁目」⒀「29才」⇒「29歳」、⒁「支払い」⇒「支払」、「未払い」⇒「未払」、⒂「手続き」⇒「手続」、⒃「次の通り」⇒「次のとおり」、⒄「困った時」⇒「困ったとき」(「場合」と「とき」の区別)、⒅「もっとも重要」⇒「最も重要」、「最もな意見」⇒「もっともな意見」(「もっとも」と「最も」の相違)、⒆「4,5人」⇒「四、五人」、⒇「%」⇐「パーセント」(これは公用文表記ルールに従わない)について紹介いたします。

 最後の「%問題」については、筆者は「この公用文表記の部分は不当」であると考えており、私見を交えて解説したいと思います。

(11) 「6ヶ月」⇒「6か月」

 「6ヶ月」と書く習慣になっている人はいませんか。メモや私的に用いるときは使用して構わないのですが、これを公的な文書に用いるのはお奨めしません。この「ヶ」は略字です。例えば、「働く」の「にんべん」と「力」で「イ力く」と書く略語があるのですが、これと同等のことです。「6ヶ月」の趣旨で書きたい場合には、「6か月」、「6箇月」と書くのが現在の公用文表記です。
 細かくいいますと、「ヶ」は「箇」の略した符号的なものです。すなわち、「箇」を分解し、「固」を省き、かつ、竹冠の一つを取り出したものです。ですので、略字とするときも小さい「ヶ」とするのが正しい書き方です。
 公用文表記の観点から、一般名詞として「4ヶ月」とか、「3ヶ所」と用いるのは誤りです。しかし、地名その他の固有名詞では、例えば「茅ヶ崎」「駒ヶ岳」「青ヶ島」などと用いられており、これらは、公用文でも用います。地名は、「霞が関」(ひらがな)「市谷」(いちがや)、「関ケ原」(大きなケ)など、表記ゆれが激しく、正式な名称を用いる場合には、個別に確認する必要があります(正式地名と駅名とが異なる場合もたくさんあります。)。

(12) 「四谷3丁目」⇒「四谷三丁目」

 住所を横書きで書く場合に、無自覚的に「四谷3丁目」と書いてしまうことがあるのですが、正式には、「四谷三丁目」と漢字で表記することが原則です(「四日市」を「4日市」と記載することがないのと同じ)。これらは、地方自治法260条の市区町村の告示によって定まります。
 ここで「漢数字表記(大部分)」か「算用数字表記(極少数)」かが決まります。漢数字表記が正式なものであるにも関わらず、自治体によってはシステム仕様(データベースの処理の便宜や見やすさの観点)の関係で住民票において算用数字で記載される場合もあります。不明の場合には、住民票の表記どおりに記載することも許容されます。
 余談ですが、「四谷三丁目16番15号」の住所地があったとして、「住居表示実施地区」では、「16番」が「街区符号」と、「15号」が「住居番号」と呼ばれるようです。地域によって、「一住居番号一住居」が原則としている地域と、「一住居番号複数住居」にしている地域があります。また、「16番地15」という表記の場合、「16番地」が「地番」、「15」が「枝番」と呼ばれるようです。これら、街区符号、住居番号、地番、枝番は、いずれも横書きの場合には算用数字で表記されます。

信託契約では、当事者を特定するために住所を記載することになりますが、算用数字で「3丁目」とある場合は正式な住所の記載でない可能性が高いことは押さえておいてください。

(13) 「29才」⇒「29歳」

 年齢を表す「才」は、俗用です。メモや速記のほかは、「歳」の文字を用いるべきです。「才」の字義として、生まれつきの能力・はたらき(天才、才能)があるとされています。「歳」の字義としては、刃で作物の穂を刈り取るまでの時間の流れを表し、それが1か年を表すようになり、さらに歳月、歳末や年齢を表すようになりました。公用文表記としては、「29歳」などと「歳」の文字を用いるべきです。
 ちなみに、生年月日では、「生まれ」を「生まれ」と表記するのか「生」とするのか迷います。文章の中では、「母は、昭和15年2月生まれで、」「下町生まれ」などと、「まれ」を送ることが多いですが、当事者特定欄では、表の記入や記号的に用いたりする場合に準じて、「生」とすることが公用文表記でも認められていると考えられます。例えば、
「住   所:東京都新宿区四谷三丁目16番15号
 職   業:自営業
 氏   名:〇川〇夫
 生年月日:昭和〇年〇月〇日生」

(14) 「支払い」⇒「支払」、「未払い」⇒「未払」

 常用漢字(国語辞書)では、「支払い」や「未払い」と記載しますが、公用文表記の中でも法律文書では、「支払」と「い」を送りません(法令における漢字使用等について(内閣法制局平成22年11月30日通知)。以下「法令における漢字使用」という。)。また、「未払い」について、法令用語では「未払」と「い」を送らない旨表記すると扱われています。
 送り仮名の付け方について、活用のある語(動詞や形容詞)は「つける傾向」、活用のない語(名詞)は「つけない傾向」がありますが、多くの例外もあるなどやや複雑です。いくつかの公用文表記の例を載せておきます。(活用⇒(活)、非活用⇒(非))

 例 
・支払わない(活) ・支払います(活) ・支払え(活)
・支払をする(非) ・未払です(非)  ・支払済み(非) ・未払状態(非)

(15) 「手続き」⇒「手続」

 これも、常用漢字と公用文との間で違いがあるものの一つです。報道関係や行政関係(一般向け広報)では、「手続き」と「き」を入れる表記が多いのですが、前記法令における漢字使用によれば、「手続」と表記します。現に、法令内の用い方は、「破産手続」、「民事執行手続」など、法令名でも「民事訴訟手続における情報通信の技術の利用に関する法律」など「き」を外しています。法律文書作成の場合は、「手続」と表記するべきです。

(16) 「次の通り」⇒「次のとおり」

 「銀座通り」「通り雨」「通り抜け」などと用いる場合には、「通り」と漢字表記ですが、「次のとおり」「通知どおりに行う」などの場合には「とおり」「どおり」とひらがな表記にするのが公用文表記です(最新公用文用字用語例集)。
 「通り」の元の意味は、人や車の通るところ、道路、往来などで、それが転じて、「話の通りがよい」などと用いられることがあるのですが、「次のとおり」では、「通り」の意味は薄くなりますので、現時点では、「次のとおり」「通知どおりに行う」などのようにひらがな表記にするのが無難です。

(17) 「困った時」⇒「困ったとき」(「場合」と「とき」の区別)

 時期、時間、時刻などの意味を表す場合には漢字の「時」を用い(例:夕食時に話をした)、「場合」という語と同じような意味を表す場合(「場合」で言い換えることができるとき)は、「とき」とひらがな表記にします。例えば、「事故のときに連絡する。」は、「事故の場合に連絡する」と言い換えが可能ですので、ひらがな表記にします。

 次に、「場合」と「とき」の使い分けですが、前提条件が単独で用いる場合、準則などで定まっているわけではありません。文章の趣旨により「場合」と「とき」を適切に使い分けているようです。2つの前提条件がある場合は、大きな前提条件に「場合」を用い、それよりも小さな前提条件に「とき」を用います。例えば、「更正又は決定をした場合において、脱漏があることを発見したときは、」などのように用います。

(18) 「もっとも重要」「最も重要」、「最もな意見」⇒「もっともな意見」

 「最も」は、程度がこの上なく甚だしいさまを意味し、「この花が最も美しい」などと用います。他方で、「それももっともな話だ」という場合の「もっとも」は、漢字では「尤も」を用いるのですが、これは常用漢字には登載されておらず、ひらがな表記にするしかありません。ちなみに、「尤も」は、道理にかなうさまを表す意味になります。
 ですので、「尤(もっと)も重要」ではなく「最も重要」に、「最もな意見」ではなく「もっともな意見」と表記することになります。

(19) 「4,5人」⇒「四、五人」

 「一」「二」「三」「十」「百」「万」「億」などの漢数字と「1」「100」などのアラビア数字(算用数字)の用い方ですが、横書きの場合、公用文では、原則として算用数字を用いることになっています。ただし、概数を表す場合は、「4,5人」ではなく、「四、五人」とすることとされています。これは、公用文表記の中でも強い縛りではないのですが、報道関係でも同様な用い方をしているようです。用いられる例としては、「数十日」「五、六万人」「千数百人」などです。
 「50日ないしごじゅうすうにち」(複合型)をどう表記するかは公用文表記の研究者でも見解が分かれており、現時点では「50日ないし50数日」とする見解(許容説)が有力とされています。

 まとめると、「6人から10数人」は許容されていますが、「数100人」「100数十人」(単発型)は、それぞれ「数百人」「百数十名」などと表記します。

(20) 「%」⇐「パーセント」(黒表記)

 ここでは、あえて公用文表記に従わない場合(黒表記)について紹介させていただきます。
 改訂版の「公用文用字用語の要点」には、「%」は、記号であり、公用文で「%」を用いる規定はなく、「パーセント」と書くのが適切である(表などは「%」表記を許容)と記載されているのは確かです。しかし、文章中に「パーセント」が頻繁に出てくると読みにくく、公用文表記の実情としても、わが国の白書(防衛白書など。政府が発行する公文書)では、「%」を用いる傾向にあります。そもそも、公用文表記の主な趣旨は、国や自治体の文書を誰もが「正確・平易・適切」に理解できるようにし、国民共有の知的資源として後世に正確に伝えること、また、常用漢字表、現代仮名遣い、法令用語の基準に基づき、誤解を招かない統一された表現を用いることで、透明性の高い行政運営を確保すること、とされています。そうだとすると、「%」が「パーセント」の趣旨であることは国民の大部分の共通認識になっている今日においては、公用文の一般についても、原則的に「%」を用いるべきであると考えます。
 ただし、法令そのものについては、「パーセント」が用いられるのはやむを得ないと思いますが、公用文について「%」は、規則になくても用いられてしかるべきであると考えます。ちなみに、「法令における漢字表記」の末尾には、「特殊用語に適用するに当たって、必要と認める場合は特別の考慮を加える余地がある」とされています。
 同様のことは、「メートル」(⇒「m」)、「センチメートル」(⇒「cm」)、「平方メートル」(⇒「㎡」)などについてもいえると、個人的には感じています。